白川茶とは?岐阜・白川町の自然が生む高品質な日本茶

岐阜県・白川町。山に囲まれ、霧が立ち込めるこの土地で、白川茶はつくられてきました。
400年以上の歴史を持つこのお茶は、標高200〜600mの冷涼な気候と昼夜の寒暖差の中で育ちます。こうした環境が、高い香りと豊かな滋味をもつ茶を生み出します。生産量は全国の0.1%未満とされ、限られた地域でのみ生産されています。
新茶の時期は、日本でも最も遅い部類に入ります。ゆっくりと育つことで、味わいに奥行きが生まれるのも、この土地ならではの特徴です。
新田製茶の歩み|明治から続く茶づくり


今回訪れたのは、明治44年(1911年)からお茶の栽培を始めた新田製茶。
明治から続く茶づくりを引き継ぎながら、その形は少しずつ変化しています。
もともとこの地域では、収穫した茶葉を組合へ出荷する形が一般的でした。新田製茶も同様でしたが、現在の取締役である新田哲也さんの代から、製造までを自社で行うようになりました。現在では、栽培から製造、販売までを一貫して手がけています。

やぶきたと芽重型栽培|品質を支える茶づくりの工夫



畑では「やぶきた」を中心に、「めいりょく」「おくみどり」「つゆひかり」など複数の品種を育てています。有機質肥料や自家製堆肥を使った土づくりに加え、「芽重型(がじゅうがた)」と呼ばれる方法で芽の数を抑える栽培など、一つひとつの工程が積み重ねられています。
製造では、その日の茶葉の状態を見極めながら、蒸し時間や温度、風量を調整します。さらに深蒸しを採用することで、青臭さを抑えながら、まろやかで厚みのある味わいを引き出しています。
「毎年、同じような味わいにする」。自然条件が変わる中で、その年ごとの状態に合わせて仕上げていく考え方です。
また、「芽が出たから摘む」のではなく、「どのような品質のお茶をつくるか」から逆算して摘採時期を決めるという考え方も特徴的です。

気候変動と深蒸し茶への転換

白川茶はもともと浅蒸し製法が主流でしたが、近年は気候の変化により、従来の方法では青臭さや渋みが出やすくなることもあるといいます。
そのため新田製茶では、深蒸しに適した栽培と製造に取り組んでいます。環境の変化に合わせて、つくり方も変えていく。そうした柔軟な対応も、今の茶づくりの一部となっています。


緑茶スイーツやコンブ茶|広がる商品


印象的だったのは、お茶そのものだけでなく、商品開発や展開への取り組みです。工場には店舗が併設され、煎茶に加え、番茶を使った粉末緑茶や加工用途向けの原料も扱っています。さらに、緑茶ケーキや緑茶クリーム大福、カヌレなどのオリジナルスイーツ、コンブ茶といった商品も展開しています。
こうした取り組みの背景には、コロナ禍をきっかけとした変化があります。それまで業務用中心だった販売から、直売やカフェ運営へとシフトしたことで、新たな商品開発が進んでいきました。
地元のデザイナーが手がけるパッケージはモダンな印象で、外資系ホテルにも納品されているコンブ茶は、緑茶やほうじ茶をベースにしたものなど多様な展開を見せています。茶葉を育てるだけでなく、お茶を使った商品開発にも取り組み、変化に対応しながら前進しています。
後継者不足と産地の課題

後継者不足は、どの産地でも深刻な課題です。お茶づくりは世襲が中心であるため、人材育成の仕組みが十分とは言えず、新田製茶も同様の状況にあります。こうした中、白川では協議会を立ち上げ、新たな取り組みが始まっています。
これからの日本茶|新田製茶が目指す未来

新田さんは、「お茶づくりは大変な面もありますが、自然と向き合い、土地の個性を生かす魅力があります。近年の日本茶ブームを追い風に、『自分もつくってみたい』と思う仲間が増えることを願い、私たちも技術や経験を伝えていきたいと考えています」と語ってくださいました。
その言葉からは、お茶づくりの技術を大切に守りながら、さらにその先へと広げていこうとする意志が感じられます。
明治から続く茶づくり。そして現在は、栽培から製造、販売、さらには新しい商品づくりへと広がっています。
同じ場所で続いてきた営みは、そのままの形ではなく、少しずつ姿を変えながら、これからも続いていきます。
